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すっきりわかった!VPN 改訂版 (すっきりわかったBOOKS)
ネットワークマガジン編集部
アスキー・メディアワークス
2009-03-02
★★☆☆☆
ヤマハルーターで挑戦 企業ネットをじぶんで作ろう
谷山 亮治
日経BP社
2011-06-21
OpenVPNで構築する超簡単VPN入門―Windows/Mac OS X/Linux対応
ケイズプロダクション
ラトルズ
2006-09
★★★★☆

VPN

VPN(Virtual Private Network)は、公共ネットワークの中で、仮想的な専用線を作る技術。

  • 専用線は、セキュリティと通信速度の点で、公共ネットワーク(インターネット)よりも優れているが、通信コストが高い。
  • VPNは、専用線の代替として、公共ネットワークを仮想的に専用化し、通信コストを安くする用途で使われる。

VPNの種類

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060922/248777/
「どこにVPNを通すか」「どんな技術を使って構築するか」によって分けられる。

VPNの種類
伝送路名称使う技術名称
インターネットインターネットVPNSSLSSL-VPN
IPsecIPsec-VPN
通信業者の広域IP網IP-VPNMPLSMPLS-VPN

インターネットVPN

  • 伝送路 = インターネット
メリットデメリット
通信費が安い通信帯域は保証されない
手軽=インターネットにアクセスできる環境なら、どのノードからもVPNが使える面倒=基本的に、設定はユーザー自身が行う

IPsec-VPN

  • 認証と暗号化にIPsecを使うインターネットVPN。
  • 固定的な拠点間を結ぶのに最適。(東京支店と大阪支店を結ぶ、など)

SSL-VPN

  • 認証と暗号化にSSLを使うインターネットVPN。
  • リモートアクセスで使うのに最適。(社外のノートPCと東京本社を結ぶ、など)

IP-VPN

  • 伝送路 = 通信業者の広域IP網
メリットデメリット
帯域が保証されている、保守サービスがある通信費が高い

MPLS-VPN

  • MPLSを使うIP-VPN。
  • 固定的な拠点間を結ぶのに最適。(東京支店と大阪支店を結ぶ、など)

VPNの基本構成

VPNの基本は、トンネリング+暗号化+認証の機能を提供すること。
http://fenics.fujitsu.com/products/ipcom/catalog/data/2/1.html

  • トンネリング … VPNソフトやVPNゲートウェイの間で、データのカプセル化を行い、仮想的な経路を作る。
  • 暗号化 … 伝送路の途中で、通信内容を盗聴されないようにする。
  • 認証 … 成りすましによる不正アクセスを防ぎ、データ改ざんの有無を検出する。

VPNの2つのモード

VPNには、トランスポートモードトンネルモードという、2つのモードがある。

通信モードネットワークへの適用例
トランスポートモードIPsecが実装されたホスト間でのIPsec-VPN
トンネルモードIPsecが実装されたルータ間でのIPsec-VPN

トランスポートモード

トランスポートモードでは、通信を行う端末(ノード)が、直接データの暗号化を行う。

  • トランスポートモードでは、すべての端末に、VPNソフトをインストールする必要がある。
  • データ(ペイロード)は暗号化される。
  • IPヘッダは暗号化されず、そのまま。 → 不正アクセスの可能性あり。

トンネルモード

トンネルモードでは、VPNゲートウェイを設置して、暗号化を行う。

  • トンネルモードでは、端末にVPNソフトのインストールは不要。VPNゲートウェイによって、透過的な通信が可能。
  • IPヘッダもデータ(ペイロード)も暗号化される。
  • VPNゲートウェイが、新たなIPヘッダを追加する。
    (=逆に言えば、VPNゲートウェイを通過しないLAN内の通信は暗号化されない、という欠点もある。)

VPNを実現するプロトコル

VPNで利用されるプロトコルには、

現在、多く使われているのは、IPsecPPTPである。

IPsec

  • IPsecは、IPレベル(L3)でトンネリング(暗号化、認証、改ざんの検知)を行うプロトコル。
  • IPv4ではオプション仕様だが、IPv6では標準仕様として採用されている。
  • IPsecを採用するメリットは、従来IPを利用してきた機器を、大きく変更することなく、透過的に利用できること。

IPsecの通信手順

IPsecの通信には、IKEフェーズとIPsecフェーズという2段階がある。

  • IKEフェーズ … 準備の段階。暗号化方法と鍵のネゴシエーションを行う。
  • IPsecフェーズ … 本番の段階。暗号化されたデータのやりとりを行う。
ipsec02.gif

https://www.fmmc.or.jp/fm/nwts/nwmg/keyword02/vpn/ipsec.htm
IPsec通信のスタート

セレクタとは?

IPsecでは、まずIPsecを適用する条件と方法を定義する。
「Aの条件に合致したら、B方式でIPsec通信を確立する」といったもので、この定義をセレクタという。
PCやルータ、VPNゲートウェイなどのノードは、パケットに対してセレクタを適用し、合致した場合はそこで定義されている方法によってIPsec通信を行う。

SA(セキュリティ・アソシエーション)とは?

IPsec通信を行う場合、各ノードは、SA(セキュリティ・アソシエーション)という仮想的な通信路(トンネル)を作成する。

IKEフェーズ

  • 最初に、IKEフェーズ用のSA(IKE SA)が作られる。
  • IKE SAを通して、暗号化方式の決定と鍵の生成・交換が行われる。
  • IKEフェーズでは、公開暗号鍵が使われる。

IPsecフェーズ

  • 次に、IPsecフェーズ用のSA(IPsec SA)が作られる。
  • IPsec SAは、送信用と受信用が別々に作られる。
  • IPsecフェーズでは、共通暗号鍵が使われる。

(参考) http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20071012/284403/

ipsec_zu1.jpg
ipsec_zu2.jpg

ESP

IPsecで使われるセキュリティプロトコル(フレームフォーマット)がESP(Encapsulation Secrity Payload)。

ESPには、

  • 暗号化に必要なSPI情報
  • 着信時にヘッダ情報を検証するためのIPヘッダ(トンネルモード時)
  • ノードの認証と改ざん検出を行うための認証データ
    が挿入される。

ESPの認証データは、メッセージダイジェストによって構成される。

AH

IPsecには、AH(Authentication Header 認証ヘッダ)というセキュリティプロトコル(フレームフォーマット)もある。
(ESPがよく使われており、AHはあまり使われない。)

  • AHは、認証と改ざんの検出を行う。(ESPと違って、暗号化はしない。)
  • AHは、ESPと組み合わせて使うこともできる。
  • AHヘッダには、IPヘッダとデータ部分(ペイロード)から作られたICV(Integrity Check Vector)と呼ばれるチェックサムが含まれており、改ざんを検出できる。

IPsecの動作モード

IPsecには、メインモードアグレッシブモードという2つの動作モードがある。

  • メインモードは、LAN間接続
  • アグレッシブモードは、リモートアクセス
    での利用を想定している。

メインモード

メインモードは、通信相手の認証にIPアドレスを使う。
そのため、IPアドレス固定の環境で使う。

アグレッシブモード

アグレッシブモードは、通信相手の認証は任意の情報を用いることができる。
そのため、DHCP等でIPアドレスが変更される環境でも使える。

PPTP

  • PPTP(Point to Point Tunneling Protocol)は、マイクロソフトが作ったプロトコル。
  • データリンク層で、暗号化や認証、改ざんの検出を行う。
  • そのため、上位層のネットワーク層IP以外のプロトコルを利用していて、IPsecが使えない環境でもVPNを構築できる。

PPTPでも、IPsecのIKEフェーズのように、データ通信に先立って各種のネゴシエーションを行う。

PPTPのネゴシエーション
認証MS-CHAP(Microsoft Challenge Handshake Authentication Protocol)
暗号化MPPE(Microsoft Point to Point Encryption)

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