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IPヘッダ = Internet Protocol header
IPパケット | |
IPヘッダ | IPペイロード |
※単位:1バイト(byte)=8ビット(bit)
IPヘッダの中身は以下のような形式で情報が入っています。
IPヘッダの基本ヘッダ部分は、20バイト(160bit)で構成されています。
オプションは、必ず付けなければならないというものではありません。
IPヘッダのフォーマットは以下の通りです。IPヘッダは20バイトのサイズですが、オプションが追加された
場合は最大で60バイトのサイズとなります。ただ、オプションやパディングは一般的には使用されることは
ないのであまり意識する必要はありません。「データ」はIPヘッダではなくIPペイロードと呼ばれる部分です。
※ IPペイロード部分には、TCPやUDPなど上位層プロトコルのヘッダとデータが含まれます。
@IT:連載 基礎から学ぶWindowsネットワーク 第10回 IPパケットの構造とIPフラグメンテーション 1.IPパケットの構造
IPパケットの詳細構造
IPパケットの構造は、IPヘッダ部分と、IPパケットによって運ばれるデータ部分(図中の赤の部分)の大きく2つに分けられる。
そしてIPヘッダはさらに固定長の部分(図中の青色と緑色の部分。先頭の20bytes)と、オプション部分(図中の黄色の部分。最小0byte)の2つで構成される。
図中の小さい1目盛りは1bit幅であり、ここでは32bitずつに区切って表現している。
IPv4ヘッダには、12個のフィールドがあります。
バージョン(Version)フィールドは、IPのバージョンを表します。
IPv4は、4(2進数表現では0100)です。
IPv6は、6(2進数では0110)です。
同じネットワーク媒体上に、IPv4とIPv6のパケットが混在していても、バージョンフィールドによって区別することができます。
整数 | バージョン |
0-1 | (予約) |
2-3 | (未割当) |
4 | Internet Protocol |
5 | ST Datagram Mode |
6 | Internet Protocol version 6 |
7 | TP/IX(The Next Internet) |
8 | PIP(The P Internet Protocol) |
9 | TUBA |
10-14 | (未割当) |
15 | (予約) |
ヘッダ長(IHL:Internet Header Length インターネットヘッダ長)フィールドは、IPヘッダの長さを表しています。
ヘッダ長によって、IPヘッダとデータの境目が分かります。
4ビット幅しかないので、0から15までしか表現できないが、ヘッダの長さは32ビット(4バイト)単位(つまりヘッダ部分は常に4バイトの倍数)で数えるので、最大長は15×4=60バイトまで表せます。
IPヘッダの固定長部分(基本ヘッダ)が常に20バイトあるので、このフィールドの最小値は5(20÷4)であり、最大値は15となります。
サービス・タイプ・フィールドは、パケットの優先度などを表すTOS(Type Of Service)を指定するために使われます。
ある特定の値が指定された場合には、他のパケットよりも優先してルーティング処理などを行う、といった設定ができます。
例えば、音声トラフィックとデータトラフィックでは、音声トラフィックのデータを優先して送出することができる、などです(いわゆるQoS処理)。
現在使われている実際のTCP/IPネットワークでは、このフィールドによるTOS指定はほとんど使用されておらず、意味を持っていないことが多いようです。
パケット長(Total Length)フィールドは、IPヘッダとデータを含めたパケット全体の長さを表します。
ヘッダ長フィールドが「IPヘッダのサイズ」を4バイト単位で数えたのに対し、パケット長フィールドはパケット全体のサイズをバイト単位で数えたものです。
このフィールドの幅は16ビットなので、パケットのサイズの最大長、つまり1つのパケットで送信可能なデータ(+ヘッダ部)のサイズは64Kバイト(65,535バイト)までとなります。
パケットがフラグメント化(大きなパケットを小さなパケットに分割)されている場合は、このフィールドは、元のパケット全体のサイズではなく、このフラグメントだけのサイズを表します。
ID(Identification)フィールドは、パケットを識別するための数値です。
IPは、下位層のネットワークインターフェース層で使用するプロトコルのMTU(Maximum Transmission Unit:最大転送単位)サイズに合わせて、送信側のIPでデータを分割(フラグメント)し、受信側のIPで組み立てる機能を持っています。
サイズの大きなパケットをフラグメント化(分割)する時に、分割後のパケット全てに同じ識別番号を与えることによって、分割されたパケットを結合して元のパケットに戻すことができます。
各コンピュータは、パケットを送信するたびにランダムな16ビットの数値を、このIDフィールドに設定します。
このIDの数値そのものには意味がなく、毎回異なるIDがセットされてからパケットが送信されるということだけが重要です。
同じパケットに属するフラグメント化されたパケットは、すべて同じIDを共有するので、後で1つのパケットに再構成する場合の目印となります。
フラグ(Flags)フィールドは、パケットの分割を制御する情報です。
3ビットあるうち、後ろの2ビットだけが使われます。
フラグメント・オフセット(Flagment Offset)フィールドは、分割されたパケットが、元のパケットのどの位置にあったかを表します。
単位は8オクテットで、フラグメント・オフセット・フィールドの最大値は8192です。
※単位:1オクテット=8ビット(=1バイト)
パケットのフラグメントは、常に8バイト単位で行われるので、この値を8倍してオフセット(位置情報)の数値とします。
これなら13ビットしかないフィールドでも、64Kバイトの範囲を表すことができます。
8オクテット×8192=65536オクテット(=64Kバイト)
Time to Live(TTL 生存時間)フィールドは、パケットが通過可能なルータの数を表します。
ルータを経由するたびに、TTLが1ずつ減っていき、0になった時点でパケットが破棄されます。
プロトコル(Protcol)フィールドは、IPの上位層(トランスポート層)のプロトコルを表します。
この値は、ICANNという組織により「プロトコル名」と「番号」が定義されています。
例えば、IPの上位層プロトコルでTCPが使用されている場合、このプロトコル番号は「6」になります。
ヘッダ・チェックサム(Header Checksum)フィールドは、IPヘッダのチェックサム(整合性を検査するためのデータ)です。
IPパケットの伝送エラーがないかチェックするためにあります。
IPヘッダ内のTTL値は、ルータを経由するたびに変わるため、各ルータでは転送
する前にヘッダチェックサムの再計算を行っています。
実際には、下位のネットワーク媒体(および上位プロトコル)でも様々な方法でエラー検査が行われているので、IPプロトコルでエラーを検出しなくても問題が発生する確率は非常に小さいです。
送信元IPアドレス(Source Address)フィールドは、32ビット(4バイト)で構成された、送信元のIPアドレスがセットされています。
宛先IPアドレス(Destination Address)フィールドは、32ビット(4バイト)で構成された、宛先のIPアドレスがセットされています。
オプションは、32ビット(4バイト)単位で追加される、可変長のフィールドです。
通常は使用されませんが、デバッグやテストを行う際に使用される情報です。
オプション部分は通常は使用されないので、IPヘッダのサイズは20バイトです。
オプションが利用される場合は、4バイト(32ビット)単位で可変であり、最大で40バイト(固定部分の基本ヘッダとあわせると最大で60バイト)にまで拡大します。
パディングは、オプションを使用したとき、サイズを調整のために入れるデータです。
オプションを追加して、IPヘッダ長が4バイト(32ビット)の整数倍にならなかった場合、オプションのサイズを4バイトの整数倍にするために、詰め物(Padding)として空データの「0」の値を入れることによって調整します。
http://www.atmarkit.co.jp/fnetwork/rensai/ipv6-03/ipv6-01.html
http://www.itbook.info/study/ipv6-4.html
バージョン(Version)フィールドは、IPのバージョンを表します。
IPv6は、6(2進数では0110)です。
トラフィッククラス(Traffic Class)フィールドは、QoSで使用するパケットのクラスです。
IPv4ヘッダのTOS(Type Of Service)フィールドに相当します。
このフィールドを使用してパケットの優先度付けを行うことが出来ます。
トラフィッククラスフィールドがどのように使われるのかは、RFC2472で定義されています。
ftp://ftp.rfc-editor.org/in-notes/rfc2474.txt
フローラベル(Flow Label)フィールドは、IPv4には無かったフィールドで、QoSで使用するトラフィック・フロー(データの流れ)につける識別子です。
例えば、リアルタイム性が要求されるインターネット電話の音声パケット群で、同じ扱いを必要とするパケットを識別します。
送信元ノードが中継ルータに対して、自分が送信する特定のトラフィックフローに対して、特別な扱いをさせるような場合に使用します。
ペイロード長(Payload Length)フィールドは、ヘッダをのぞいたパケットサイズを表します。
IPv4のパケット長は、ヘッダ+データの長さでしたが、IPv6ではヘッダをのぞいたデータの長さになっています。
次ヘッダ(Next Header)フィールドは、IPv4ヘッダでいうところの、プロトコル番号に相当するフィールドです。
IPv6ヘッダの次のヘッダという意味で、上位プロトコルのヘッダやIPv6拡張ヘッダを表します。
上位プロトコルがTCPであれば、プロトコル番号は「6」、UDPであればプロトコル番号は「17」となるのは、IPv4のプロトコル番号と一緒です。
ホップ制限(Hop Limit)フィールドは、IPv4ヘッダでいうところの、TTLに相当するフィールドになります。
送信元IPアドレス(Source Address)フィールドは、128ビット(32バイト)で構成された送信元のIPv6アドレスがセットされます。
宛先IPアドレス(Destination Address)フィールドは、128ビット(32バイト)で構成された宛先のIPv6アドレスがセットされます。
IPv6ヘッダは、IPv4のオプションのようなデータを追加するフィールドが無い代わりに、拡張ヘッダを追加できます。
IPv6拡張ヘッダ http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20071009/284087/
IPv6パケットフォーマット http://www.infraexpert.com/study/ipv6.htm
基本ヘッダ(緑色)と各種拡張ヘッダ(青色)は数珠つなぎされる
http://www.itbook.info/study/ipv6-4.html
IPv6拡張ヘッダは、RFC2460で6種類が定義されています。
http://www.ipv6style.jp/jp/tech/20030425/index.shtml
IPv6では、基本ヘッダと拡張ヘッダを明確に区別し、基本ヘッダの後に拡張ヘッダを続ける構成としている。
基本ヘッダは40バイトの固定長で、すべてのIPv6パケットにつけられる。
拡張ヘッダはあくまでオプションであり、付加サービスが使われない場合はつけられない。
拡張ヘッダは、その役割に応じていくつかの種類がある。
複数の付加サービスを使う場合には、それぞれの役割ごとの拡張ヘッダが数珠つなぎでつけられる。
IPv6基本ヘッダのなかにNext Headerという8ビットのフィ—ルドが見られる。
これを見ると、次に拡張ヘッダがあるのか、ないのかが分かる。
拡張ヘッダが使われない場合、IPレイヤの情報は基本ヘッダのみとなり、次に続くのは1つ上のレイヤのTCPヘッダあるいはUDPヘッダなので、そのどちらであるかがNext Headerフィールドに示される。
拡張ヘッダが使われる場合、どの種類の拡張ヘッダが次にくるのかが示される。
拡張ヘッダの種類
拡張ヘッダの種類としては、ホップバイホップ・オプション、デスティネーション・オプション、ルーティング、フラグメント、認証(Authentication)、ESP(Encapsulating Security Payload)の6種類が用意されている。
複数の種類の拡張ヘッダを併用する場合には、この順番でつなげることが望ましいとされている。
拡張ヘッダは基本的に終点ノードによってのみ処理されるものと説明したが、その唯一の例外がホップバイホップ・オプション・ヘッダである。
文字通り、パケットがルータを通るごとに実行されなければならない処理を指定するために用意されている。
用途は特に限定されていない。
例としてはJumbogramオプション(RFC2675)がある。
IPv6基本ヘッダにあるPayload Length(IPv6ヘッダを除くパケットの長さ)フィードは16ビットであるため、65536オクテットまでしか指定できないが、これを超えたサイズのパケットを送る必要がある場合に、拡張ヘッダで長さを指定しなおそうというのがJumbogramオプションである。
デスティネーション(宛先)・オプション・ヘッダは、宛先ノードによって実行される処理を指定するために用意されているヘッダである。
用途は特に限定されていない。
IPv6における拡張ヘッダは、基本的にすべて宛先ノードによってのみ処理されるものということはすでに述べた。
その意味では、フラグメント・ヘッダなどもデスティネーション・オプションと同じだと言える。
しかし、デスティネーション・オプションでは、さまざまな処理を指定できるところに違いがある。
ルーティングヘッダは、ルーティング経路を指定するための情報を埋め込むものである。
これにより、プロバイダを選択するなど、特定の用途のためにパフォーマンスを確保することが可能になる。
始点ノードは、このパケットが通過しなければならないルータのアドレスを、ルーティングヘッダ内にリストして示す。
このリスト内のアドレスは、次々にこのIPv6パケットの宛先アドレスとして割り当てられることによって、バケツリレー式にパケットが転送されていくことになる。
フラグメント・ヘッダは、IPv6パケットの送信元が、Path MTUよりも大きなパケットを送りたいときに、組み立て方を宛先に指示するためのヘッダである。
まず、MTU(最大転送単位)とは文字通り送信パケットの最大サイズのことだ。
インターネットのようなネットワークでは、宛先ノードまでの間にどれほど細い経路があるのかが大きな問題となる。
細い経路に大きなサイズのパケットを無理やり通そうとしても、溢れてしまうからである。
IPv4の世界では、パケットの経路に存在する各ルータが、各インタフェースに設定されるMTU値にしたがって、パケットを分割する作業を実行することができる。
しかし、この作業はルータに大きな負担となる。
したがって、IPv6では、パケットの分割は送信元ノードだけが行うこととしている。
IPv6における送信元ノードは、Path MTU Discoveryという作業を行い、特定の経路においてもっとも狭い帯域の部分を検出し、1つひとつのパケットのサイズをその細さに合わせて送る。
言い方を変えれば、広い帯域が宛先ノードまで完全に確保されていれば、1つひとつのパケットを大きなサイズで送ることができる。
送信元のアプリケーションがこのメカニズムに対応していれば、アプリケーションからのデータが最適なサイズで出てくるため、IPレイヤでは特に処理をする必要がない。
しかし、アプリケーションが対応していない場合、Path MTU Discoveryによって発見されたMTUよりも大きなパケットを吐き出してくることになる。
これを適切なMTU値に合わせるためのパケット分割が、送信元ノードのIPレイヤで実行されることになる。
この際に使われるのがフラグメント・ヘッダだ。
IPレイヤにおけるセキュリティの仕組みとして知られているのがIPsecである。
IPv6ノードは、IPsecを実装していなければならないとされている。
しかし、実装と利用とは話が別であり、IPsecによる通信を実際に使うかどうかは、時と場合によって異なる。
IPsecが利用される場合、パケットの認証と、データ内容の一貫性の保証のための認証ヘッダや、データの暗号化に関する情報を示すESPヘッダは、拡張ヘッダとして組み込まれる。
IPsecは、IPv4の世界でも共通に使えるメカニズムとして規定されているが、IPv4ではこれらの情報はOptionsフィールドに入れられていた。